恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
「……うれしい」
思わずそう口走った。
こんなにうれしいことはない。男の人にヤキモチをやいてもらえたのだ。しかも、なにもかも手にしているような最上級の男ともいえる一樹に。
「まったくなんなんだよ、梓は。そういうのが無自覚って言ってんだよ」
「えっ? ……ひゃっ」
一瞬のうちに、梓はソファの上で一樹に組み敷かれていた。
「ほんっと、かわいくてたまんないね」
一樹に言われる〝かわいい〟は、心臓にとても悪い。たったひと言で梓の胸を高鳴らせ、鼓動を速め、温度まで急速に上げてしまうのだから。
でも、心配事もひとつある。
「……一樹さん、視力は本当に大丈夫ですか? 一度眼科へ――んっ……」
全部を言い終えるまでに、言葉は一樹の唇に飲み込まれた。
それ以上なにも言えなくなるほど激しく唇が奪われる。身体中の酸素をすべて吸い尽くされるような勢いだった。
でも梓は、全然嫌だとは感じない。それどころか一樹の熱情が伝染して、身体が熱い。
バスソルトなのか、ふたりから同じ香りがするのが妙に刺激的だった。
抱き上げられベッドに連れていかれたときには、梓の身体は一樹を焦がれて待ちわびていた。