恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
(……もしかして私を呼んでる?)
梓がジェスチャーで自分の胸を指差すと、目で〝そうだ〟と答えた。
デザイン企画部のブースを出て、「お疲れ様です」と挨拶を交わす。友里恵は、「ちょっとこちらへいい?」と通路の隅の方を指した。
なにを言われるのだろうかと、スッと背筋の伸びた友里恵の後を追っていく。
そして、目的の場所に到着すると、友里恵はダンスのターンでもするかのごとく優雅に振り返った。
「社長とはうまくいっている様子ね」
友里恵が梓に顔を近づけて声をひそめる。
からかうような言い方ではなく、真剣な様子だった。
こうして間近でその顔を見るのは初めてだが、四十五歳にはとても思えないと梓は改めて感じた。目じりに小じわはなく、ほうれい線もない。
ハリツヤのある肌は、もしかしたら二十代でも通るかもしれない。
「それで、ご結婚はいつなさるの?」
「け、結婚ですか?」
やっと本物の恋人に昇格したかと思ったら次は結婚ときた。