恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
一樹が言っていたことは本当だったようだ。友里恵は、一樹の結婚になによりも重点を置き、そしてそれこそが秘書の仕事。結婚して初めて、真の社長だということらしい。
「本当に頼みますよ。……ところであなた、身長がとてもお高いのね」
友里恵は梓の頭からつま先まで、サッと視線を流す。嫌味な目ではなく、心から感心している様子だ。
「はい。最近はハイヒールにしたので余計にそう見えるのかもしれません」
「あなたくらいの身長だと、社長の横に並んでも全然引けをとらないわ。この前のパーティーで会ったときより、なんだか垢抜けた感じもするし」
友里恵に褒められるとは思ってもいなかった。それも、背の高さのおかげで一樹の隣でもおかしくないと言ってもらえるとは。
「ありがとうございます……!」
いつも気迫に満ち溢れ、近寄りがたいオーラを遠慮なく放つ友里恵。そんな彼女に恐れをなしていた梓だが、思いがけない言葉をかけてもらい、少し距離が縮まった気がする。
「話は以上よ。忙しいところ呼び止めてごめんなさいね」
友里恵は美しい笑みを浮かべ、再び舞うように身体の向きを変え、ヒールの音を響かせて去っていった。