恋の餌食 俺様社長に捕獲されました
梓が押し黙ったままでいると、遠藤は『午後にでもお会いしましょう』と半ば強引に約束を取りつけた。
待ち合わせは、梓の自宅近くの駅。やって来た遠藤の車に乗せられた。
やけに晴れた午後だった。雲ひとつない六月末の空は真っ青。梅雨空はいったいどこへ?と思うような空模様だ。
フロントガラスから差し込む光が眩しすぎて目を閉じると、別れ際に見た一樹の横顔が梓の脳裏に浮かんだ。息が詰まるように苦しくなり目を開けると、今度は自分の置かれた現実が見えて切なくなる。
「僕に会ってくれたんですから、久城一樹とは別れたと思っていいんですね?」
「……はい」
声にならず、口から吐き出した空気で答えたようになる。
一樹との別れは認めたくないが、それが現実。自分が選んだ道。
「これで、母のお店はあのままなんですよね?」
「約束ですからね。商業ビルの計画はストップしますよ」
「本当ですね? 絶対ですよ?」