不思議の国のティーパーティー



時計屋があたしのための紅茶を用意してくれた。


「美味しいわ……」

「ケーキにマカロンだってある。好きなものを食べていいよ」



小さなねずみのソラが積み重なった本によじ登って目線を合わせて言ってくる。

それがなんだかおかしくて、ちょっぴり可愛くて、つい笑みがこぼれた。



「ありがとう」

「姫様もいつだって来ていいんだよ」

「あたしはいつでも来れない。今日はお城がお祭り騒ぎだから。ちょっと抜け出してもばれないの。きっとね」



そう言いながら、「きっとアオイは気付いているけどね」と心の中で付け足した。



「そうなんだ。姫様もまた来れたら楽しいのに」


時計屋もうさぎもねずみも口々に言う。

ずっとこんな楽しい時間が続けばいいのに。


そう思った時だった。




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