不思議の国のティーパーティー
「なんというか……お嬢様らしいというか……」
「で、でも。たくさんのおとぎ話が王子様のキスで呪いが解けたり、眠りから覚めたりしているわ。それは大昔に実例があったからじゃないの?」
顔をパタパタと冷やしながら、精一杯の言い訳をする。
しかしそれも「馬鹿なんですか」と一言で断ち切られた。
「童話は全て作り話です。大きな壁を乗り越えるラブストーリーを最後ロマンチックに締めくくるためのオチですよ」
「で、でも……!」
片っ端から言いくるめられてしまうのが悔しかった。
どうにか対抗したいあたしの気持ちを他所に、アオイが一歩近づき、持っていた眠り姫の本をあたしに渡した。
「お嬢様、そんなに私とキスをしたいのですか?」
いつもより一つ低いトーン。
パーソナルスペースを余裕で越えた今までにない距離。
心臓が大きく波打った。