御曹司は偽婚約者を独占したい
「……なるほどな」
「え?」
「君に惹かれた理由が、今、ハッキリとわかった」
そのとき、不意にそう言った近衛さんの手が伸びてきて、私の腰を引き寄せた。
突然のことに目を見張る。
必然的に身体と身体が密着し、途端にノーブラだったことを思い出した私は慌てて彼の胸に手を置くと、距離を取ろうとした。
けれど、彼はそれを許さなかった。
「あ、あの、近衛さん……っ」
「……逃さない」
すぐに強く抱き寄せられて、身体は彼の身体に添うように弓なりになる。
厚い胸板は逞しく、彼の鼓動が密着したところから伝わってきて声に詰まった。
熱のこもった目で見つめられ、自然と頬が熱くなる。
一体、何が起きているの──。
頭の中は混乱してしまい、もう、どうしたらいいのかわからない。
胸の鼓動だけがやけに鮮明に聞こえて、指先が痺れるように震えた。