御曹司は偽婚約者を独占したい
「こ、近衛さん、ダメです……」
「うん?」
「さっきも言いましたけど、私……こういうことに、免疫がないんです。だから、もうこれ以上、からかうのは止めてください……!」
憧れの彼の腕の中にいたら、ダメだとわかっていても流されてしまいそうになる。
私と彼は、住む世界が違うのだ。
今、こうして彼が私を丁寧に扱ってくれるのだって、私が彼の偽者の婚約者だからに過ぎない。
そう、そうだ。
だから彼の甘い言葉をすべて、鵜呑みにするようなことがあってはいけない。
私たちの関係は、期間限定のものだから──。
「さっきも言っただろ? からかってなんかない」
「ん……っ」
「俺は思ったことしか言わないし、そもそもこれは──俺を誘惑しているのかと思っていたけど、違うのか?」
「あ……っ!」
そう言うと、近衛さんは私が着ているシャツの裾から手を入れた。
直に肌に触れた彼の手はそのまま上に上がっていくと、下着をつけてない私の背中を滑っていった。