夢物語
 自分のスマホはないと日常生活上困るし、マナーモードにしても着信時の振動などですぐに見つかってしまうはず。


 そこで利用したのが、ほとんど使われていない母のスマホ。


 それを偶然を装って助手席のマットの下に隠し、追跡アプリで優の行動を監視。


 バッテリーは一週間近く持つだろうし、その間にサークル活動は数回はある。


 一週間もあれば絶対、あの女と接触するはず……。


 メールの送受信の頻度や内容からしても、週に一度は活動後に待ち合わせをしているのは間違いない。


 「一度も車に乗ったことのない我々の母のスマホが助手席の下から出てきたら、普通だったら変に思うよね」


 バレた時のリスクを考えて躊躇した姉も、最終的には私の計画に同調してくれた。


 私の気持ちが晴れるならと。


 そしてサークル活動日を調べ、その日に私の部屋に集まって、アプリのGPS機能で優の行き先を探ることにした。


 「こういう時に限って、ファミレスくらいにしか行かなかったりして」


 「そしたらもうあと一週間粘る。それでも何も出なければ……」


 SNSを監視しただけでは疑惑の域を出ない。


 疑惑のままで終わってほしい気持ちと、白黒はっきりさせたい苛立ちとが半々くらいだった。
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