夢物語
 一時間くらい経った頃だろうか。


 眠くなってきてうとうとしていたところ、ラインの着信音で一気に目が覚めた。


 「撮ったよ!!」


 姉は寒い中、車のエンジンを切って暖房も使えないままひたすら待ち続け、二人がホテルの駐車場から出てくる瞬間を見事激写してくれた。


 「ただしブレちゃってゴメン」


 対象物は暗がりで動いている物体なので、スマホのカメラも昔よりは性能が格段に良くなったものの、限界があったようだ。


 それでも画面一杯に運転席、助手席、そして車のナンバーが確認可能。


 ぼけてはいるものの運転席の優と、助手席に座る高橋冴香が認識できて……これなら証拠写真として使えそう。


 これからどうするか未だ決めかねている段階だけど、いざという時の最終兵器としてこの写真を使えるとなって、何となく心強さを覚えたのだった。


 「あ、明日母さんにスマホ返しに行こうね」


 すっかり忘れてた。


 即刻追跡アプリを削除し、電源を切っておいた。
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