夢物語
 「オーダーはどうするのかな。賢人と西本くんは固定として、私と塩ちゃん。冴香ちゃんは向こうの人とペアを組む形かな」


 小倉さんが言及した通り、他四人は以前からの固定ペアのため、私が現地の人と即席ペアになる可能性が高い。


 「第一ダブルスは俺と西本かな。ここを落としたらチームの負けにつながるから、西本、頼むぞ」


 「お、絶対的エース気取りの発言」


 十人編成のチーム対抗男女混合団体戦は、ダブルス五つで試合が行なわれる。


 予選は五試合全て実施し、五戦中三勝した方が勝利。


 とりわけ一試合目の男子ダブルスが、チームを勢いづけるために勝利が必要不可欠だった。


 若手から中堅の領域に入ろうとする賢人・西本コンビはこの界隈ではかなり強力なペアとして知られていた。


 パワーで相手を粉砕する賢人と、巧みなゲームコントロールで試合を組み立てる能力にたけた西本くんは、お互いを補い合えるいいコンビだった。


 しかも同い年。


 学生時代は全く面識がなく、社会人になってから今のチームで知り合いペアを組むようになり、戦績を積み重ね今に至る。


 固定のダブルスペアのいない私には、とても羨ましい話。


 過去の不倫トラブルの際、私を裏切った人たちの中には当時ペアを組んでいた友達もいた。


 それ以来、実は誰に対しても心を閉ざしている。


 人前では明るく振る舞いつつも。


 あの一件によって負わされた心の傷は、未だにトラウマとして私を苛んでいるのかもしれない……。
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