夢物語
 話によると、有名なパン屋さんのある所を左に曲がり、しばらく直進した辺りらしい。


 車内でもしばらくの間盛り上がっていたけれど、いつの間にか西本くんが無言になっていた。


 寝ちゃったのかな?


 そう思ってちらっと見ると……。


 「……もしかして、具合悪いとか?」


 時折差し込む街灯の光が、顔色の悪さを照らし出す。


 「はい、若干……」


 「えっ、まずいんじゃないの?」


 後部座席の異変に気付いた松元さんが、車を左車線に急いで停車させる。


 「あ、大丈夫です。吐くまではならなさそうです」


 「吐いて楽になった方がいいぞ」


 警察という職業柄か、藤本先輩の言葉は取り調べ中の刑事っぽい。


 「いえ、帰ってすぐ横になれば、大丈夫です」


 西本くんは時折、口元を手で押さえる仕草を見せたものの、松元さんにもらったミネラルウォーターを口に含むと、気持ち悪さも収まった様子。


 車は再度発車し、西本くんのマンションが近付いてきた。
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