夢物語
 「おっと危ない」


 無事にマンション前まで到着し、挨拶をして車を出た西本くん。


 しかし足元がふらついている。


 部屋にたどり着けず、廊下で倒れそうな勢い。


 「部屋まで送った方がいいのでは」


 同性である藤本先輩が当然言ってくれると思ったのだけど、これまた酔いのせいか、シートベルトの解除に手間取っている。


 「あ、私行きます」


 そうこうしている間にも、西本くんが財布を落としてよろめいている姿が見えたため、後部座席の私が飛び降りて後を追った。


 「危ないなあ。行き倒れになるよ」


 落とした瞬間に散らばったカード類を拾い集め、手渡す。


 「大丈夫ですよ。冬じゃないし……行き倒れて凍死ってこともないでしょう」


 よろめきながらも答える。


 「今日はかなり飲んでたね」


 あえて言うまでもない。


 一次会は食事しながらだから気付かなかったけど、二次会のあたりからかなりのピッチでおかわりを繰り返していた。


 いったい何杯飲んだのだろう。


 いつしか酔いが回ったのかテンションも上がり、日頃はあまり目にしない、隠された本性も目にした気がする。


 「泥酔モードだったしね」


 「俺、酒飲んだらいつもあんな感じですよ」


 「そうなんだね。我々の集まりじゃ終電後まで飲む機会ってあまりないから、あそこまで酔う機会なんてなかなかないしね」


 郊外組が多いので、終電を逃すとタクシーで帰るしかない。


 となるとタクシー代は数千円どころか、七~八千円に到達する人も。


 都心のビジネスホテルにでも宿泊したほうが断然安い。
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