お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
(許さない。こんなに可愛くて優しい天使のようなサーシャを泣かせるなんて…!!)
がしっ!と肩を掴むと、サーシャは目を見開いて顔を上げた。
自分と瓜二つの顔が瞳に映る。
そして、感情任せに覚悟を決めた私は、サーシャに向かって高らかに言い放った。
「泣かないで、サーシャ…!お姉ちゃんがサーシャになりすまして、いじわるした令嬢達を懲らしめてあげる!」
「へっ……?!」
サーシャにとって、それは予想外の提案だったらしい。
碧眼をまんまるにした彼女は、動揺を抑えきれないように瞬きを続ける。
「懲らしめるなんて…、お姉さまにそんなことさせられないわ…!」
「私のことなら平気よ!大事な妹を辛い目に合わせたいじめっ子を、タダで済ますわけにはいかないもの。」
困惑するサーシャ。
しかし、彼女は私の言葉の続きを聞き、はっ!とする。
「それに、ヴィクトル様に会いに行くたびに目の敵にされていたんじゃ、結婚どころじゃなくなるでしょう…?」
「!」
「サーシャが少しでもヴィクトル様のことを好きなら、私は二人の未来を守りたい。」
もし、いじわる令嬢達のいびりに耐えかねて、結婚すら嫌になってしまったら。
ましてや、令嬢たちの罠にかけられて、サーシャが王子に嫌われるような結果になってしまったら…、恋愛すらトラウマになってしまうかもしれない。
すると、少しの沈黙の後。サーシャが小さく息を吐いて、ぽつり、と呟く。
「ヴィクトル様のことは…好きになりたいと思っているわ。あんなに、まっすぐ私を好きだと言ってくれた人は初めてだし…、私にはもったいないほど優しくて素敵な方だから…」