お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


「どこに行かれるんです?お嬢様。」


「ひっ!」


ザッ!!と、目の前に立ちはだかったのは黒い燕尾服。

もちろん、私を“お嬢様”と呼ぶのは1人しかいない。


「ア、アレン…!」


無言で琥珀色の目を細める彼。

なぜだ。

何故、一瞬で正体がバレている…?!

すると、私の心を読んだかのように「フッ…」と微笑を浮かべたアレンは、つぅ…、と長い指で私の頰を撫でる。


「専属執事の目をナメないでいただきたい。私が、お嬢様とサーシャ様を見分けられないとでも思いましたか。」


「うっ…!」


「おおかた、変装してパーティーに乗り込み、サーシャ様をいじめた令嬢に制裁を下すなんてぶっ飛んだ提案をしたのでしょう?」


(バレてる…!全部バレてる…!!)


恐るべき洞察力と推理力。

単純明快な私の思考回路が、幼馴染みの彼にとっては至極読み取りやすかったということも原因かもしれないが、私は目の前の青年の余裕の表情に感嘆の声すらでない。


「私を止めるつもり…?」


思わず身構えたものの、アレンは涼しい顔だ。

突進からの頭突きで強行突破しようとする私を“いなす”ことなんて、赤子の手を捻るようなものだということか。

しかし次の瞬間。

妹のために自身の専属執事を手にかける覚悟を固めた私の耳に届いたのは、予想もしない彼の一言だった。


「お嬢様。お嬢様は、目には目を歯には歯を、という言葉を知っていますか?」


「へっ?」

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