お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
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「ここが、戦場ね。」
「お嬢様。バーゲンセールのように言ってはいけません。ここはバーゲンよりも数倍タチの悪い欲望と嫉妬の巣窟ですよ。」
ハンスロット家の屋敷を出て馬車に揺られること三十分。私は、アレンと共にドでかい城の前にいた。
燕尾服の襟を正したアレンは、ちらり、と会場となる広間を見つめている。
アレン曰く、今日のパーティーは近隣諸国に住む上流階級のゲストを招いた交流会らしい。貴族の世界においてツテは非常に重要であり、裏ではみんな王子に媚を売ろうと必死なのだとか。
随分と辛辣な分析を表情一つ変えずに言い放つアレンに目を細める私だが、彼は自然にエスコートしながら私の手を引いていく。
「受付は今朝ルコットが済ませたようですから、早速会場へ入りましょう。私が馬車の中で教えたことは頭に入っていますか?」
「えぇ、もちろん。ニナ=ハンスロットの名にかけて、完璧に演じてやるわよ…!」
「それは頼もしいですね。」