お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
微笑を浮かべるアレンと共に一歩、足を踏み入れると、そこは私の知っている社交場ではなかった。
誰もが高級品を身につけた上層ブルジョアジー。歩くだけで絵になるような美男美女が集まっている。
私の生まれたハンスロット家はいわゆる庶民派で、本物の貴族に囲まれたら少し浮いてしまうほどの家柄だ。
人間そのもののオーラの違いを肌で感じる。
数時間前まで庭で猫と戯れていた私は、誰とも話が合う気がしない。
(ここが、サーシャの嫁ごうとしている世界なのね。)
と、喉を鳴らした
その時だった。
『あら?サーシャさんではなくって?』
ふいに呼び声の方を向くと、ドレスを着た数人の女性がこちらを見てひそひそと笑っている。
(っ、で、でたーーっ!いじめっ子令嬢と、その取り巻き達ーっ!)
あまりにも想像通りの光景に、つい顔が引きつる。
彼女らの一体感と言ったらない。まるでシンデレラをいびる継母と義姉だ。
すると、恐らく意地悪令嬢の中核であろう女性が口角を上げて言い放った。
『今朝ご挨拶した時にすぐ出て行ってしまわれたから、てっきり、お家に泣いて帰ってしまったのかと思いましたわ。』
ヴォン!と、心の中の炎が燃え上がった。
取り巻きの令嬢たちも、追い討ちをかけるように次々と口を揃える。
『サーシャさんのような庶民には、このパーティーの空気が合わないようでしたものね。』
『そうそう。見かけだけでヴィクトル王子をたぶらかした庶民には少し刺激が強かったかしらと思って、心配していたんですよ?』