お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。

心配していた、なんてどの口が言う。

これと同じような思いやりのかけらもない嫌味な暴言をサーシャが一人で浴びたのだと考えると、悲しみと怒りで震えが止まらない。

しかし、ここで掴みかかってはダメだ。今の私は、泣く子も微笑む傾国の天使サーシャなのだから。

すると、何も言わない私を見て、ボスであろうお嬢様がニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべながら低く告げた。


『やはり、貴方のような庶民がヴィクトル様の隣に並ぶなんて信じられないわ。サーシャさんは、資産家の家に生まれた私たちとは違う世界の人ですものね。』


その時、アレンが小さく私の肩に触れ、合図を送った。

堪忍袋の尾が切れる一秒前。

ふぅっ、と呼吸をした私は、静かに顔を伏せて口を開く。


「あら?もしかして、私に話しかけていたんですの?」


『『『は…?』』』


令嬢たちの声が重なった。

すっ、と顔を上げた私。

落ち着いていて、聡明な、サーシャのように。少し突かれたくらいでは揺らがない品がそこにあった。


「ぺらぺらと家柄を自慢するほど高貴なご身分のお嬢様方が、私のような下級令嬢に構うなんて思いもしませんでしたので。申し訳ありませんが、モブの言うことだと思って全く聞いていませんでしたわ。」


『なっ…!!』


一気に顔がひきつる令嬢たち。

アレン直伝の冷ややかな視線が、狼狽える彼女たちを貫いた。


「もし私に用があるのでしたら、もう一度最初から言ってくださる?」

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