お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
と、その時。
ワッ!と辺りが色めきたった。ざわざわと騒がしい会場に、首を傾げる。
目を見合わせた私とアレンが、きょろきょろ、と周りを見渡していると、コツ、と歩み寄ってきた足音が背後で止まった。
「サーシャ!やっと見つけた…!」
声の方を振り向くと、視界に映ったのはシルク素材の赤いマントを羽織った青年。
彼のサラサラなブロンドの髪とエメラルドグリーンの瞳はまるで一枚の絵のようで、整った顔に一瞬で目を奪われる。
(誰…?)
すると、私の思考を一瞬で察したアレンが、やや慌て気味に小声でフォローした。
「初見ぶらないでください…!ヴィクトル王子ですよ…!!」
(この人が未来の旦那…!?)
美の化身と言っても過言ではない神々しいオーラ。その品のある佇まいは、まさにThe王子。
どうやら、辺りが騒がしくなったのはパーティーの主役である王子が現れたからのようだ。
するとその時。王子は静かに私の手を取り、そっと手の甲に口付けた。不意打ちの出来事に呼吸を忘れる私に、彼はにこりと微笑む。
「城の臣下から、サーシャの馬車が会場を出たと聞いて心配していたんだ。僕と会う気はなくなってしまったのかと思ったよ。」
「と、とんでもない…!えっと…、その、忘れ物をしてしまって…」