お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
屋敷から連れてきた忘れ物が双子のおてんば令嬢と腹黒執事であることなんて、口が裂けても言えない。
ましてや、本物のサーシャは会場にすらいないなんて言えるわけがない。
しかし、私の緊張をよそに全く疑わない王子は、にこやかな笑みのまま言葉を続ける。
「それはよかった…!僕はゲストとの挨拶があるから二人でゆっくり話す時間はないけど、会えて嬉しいよ。料理も飲み物もたくさんあるから、楽しんでいってね。」
「えぇ!ありがとう。」
にこやかに去っていく王子。
その背中さえ、神々しく見える。
(すごい。サーシャが好きになるのも納得の理想の王子様だわ…)
「お嬢様。これでサーシャ様がボイコットしたことは知られずに済んで、目的の一つである王子とのコンタクトに成功ですね。」
耳元で囁き笑うアレンに、こくり、と頷く私。
さぁ、ここで残る目的はあとひとつ。
最大にして最難関の、いじわる令嬢を懲らしめることだ。
その時。
ふと、アレンがバイキングテーブルに並ぶ料理を見つめていることに気がついた。
彼の眼差しは、いつもよりどこか鋭い。
「どうしたの?アレン。お腹が空いたなら、お皿を取ってきてもいいわよ。」
「いえ…。今夜の肉料理には、レーヴェンが使われているなと思いまして。」