お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
『サーシャさん。少しよろしいかしら。』
その声の主に、はっ!とする。
振り返ると、そこにいたのは先ほどの令嬢軍団。不敵な笑みを浮かべる彼女たちは、何事もなかったかのようにこちらへ歩み寄った。
一気に笑顔が消え去ったモニカは、怯えたように瞳を震わせている。
しかし、身構えた私に、令嬢達はにこやかな表情のまま言葉を続けた。
『サーシャさん。先程は失礼なことを言って、すみませんでしたわ。』
「えっ…?」
『ヴィクトル様に気に入られた貴方が羨ましくて、つい、出来心で意地悪を言ってしまったんですの。』
予想外の言葉。
こんなに急にしおらしくなるなんて思いもしなかった。先ほどの嫌味が、よほど効いたのだろうか?
面食らった様子のモニカと共に目を見開いていると、令嬢達は、にこやかな笑みのまま私たちを近くのテーブルへと導いていく。
『…さ。少しでもお詫びに、と思って、コックに頼んで苺のケーキをご用意しておきましたわ。』
「ケーキ…?」
『えぇ。遠慮せずに、召し上がってくださいな。』
彼女達の言う通り、白いテーブルクロスの上に用意されていたのは苺のケーキ。
一見ただのショートケーキだが、その上にはキラキラとした苺と、溢れるほどの苺ソースがかかっている。
(これを、わざわざ私のために…?)