お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。

確かに、口の中は大量のタバスコのせいで大炎上している。

優雅にお口直しなどしている場合ではないはずなのだが、焦りもしていないアレンにつられ、私は促されるまま注がれたティーカップに口付けた。


一口飲んだ瞬間、その味に目を見開く私。

その一瞬の仕草に気付いた様子のアレンは、フッと笑って高らかに告げる。


「いかがでしょう、お嬢様。ここでひとつ、城の給仕係を呼んでみては?」


執事の助言に、目を見開く令嬢達。

その瞬間、アレンの思惑を全て察した私は微かに笑い返して、すぅっと息を吸い込んだ。


「ちょっと。城のコックと給仕係を呼んでくださる?」


パンパン!と手を叩く音が辺りに響いた。

血相を変えたメイド達が、素早く指示通りに駆けていく。


『さ、サーシャ様…?どうされたんです?何か気に触るようなことでもございましたか…?!』


王子の婚約者に呼び出されたと聞き、顔色を変えてすっ飛んできたヒゲを蓄えたコックと、紅茶のサーバーをしていた給仕係。

私は、わずかな沈黙の後、冷静な声で静かに告げた。


「一体、何ですの?この味は。ここは、ゲストを招いた大事な社交会。城に勤める一流の貴方達がするような仕事だとは思えませんわ。」

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