お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
その時。手を差し出した軍服の彼は、人懐っこい笑みを浮かべた。
「よろしくね、ニナ嬢。歳の離れた友人だと思ってよ。ダンレッドって気軽に呼んでくれればいいからさ。」
にこやかに握手を交わす私たちを横目で見つめるアレンは、やがて私の手に持つ買い物カゴを覗き込んだ。
「そういえば、お嬢様。私の頼んでおいたメロンはちゃんと買ってきましたか?」
にこっ!と笑いかえす私は、自慢げに大きなメロンを手渡しながら答える。
「えぇ!ばっちりよ!…もしかして、ダンレッドに振る舞うために用意したの?」
「いえ。これは、もう一人のお客用です。」
「もう一人?」
首を傾げると、ケタケタと楽しそうに笑ったダンレッドが腕を組んで声を上げた。
「メルは、無類のメロン好きだもんね!きっと、この賄賂があれば、何でもお願いを聞いてくれるでしょ!」
「えぇ。メルさんが来てくれれば、の話ですけど。…まぁ、ダンレッドが電報を送ったなら、きっと会いに来てくれると思いますが。」
どこか不安げに呟いたアレン。
どうやら、ダンレッドがこの屋敷に来た理由は、メルさんという人に会うためらしい。アレンが朝からバタバタと準備に追われていた理由がやっとわかった。
名前からして、綺麗な女性が頭に浮かぶ。メロンが好きだなんて、きっと可愛らしい方なのだろう。