お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
「お久しぶりです、メルさん。」
いつもより少し緊張したようなアレンの声が部屋に響いた。
一歩前へ進み出たアレンを、ちらり、と見上げるローズピンクの瞳。わずかに緩んだ彼の形の良い唇が、穏やかに弧を描く。
「大きくなったね、アレン。俺の家を出てからだから…八年ぶり?」
「はい。メルさんも、お元気そうで安心しました。」
話によると、アレンがハンスロット家の執事になる前。孤児だったアレンはダンレッドの紹介でメルさんと知り合い、メルさんの家に半年ほどお世話になっていたことがあるらしい。
するとその時。ニコニコと笑みを浮かべるダンレッドに、眉を寄せたメルさんが焦ったように尋ねた。
「ダン。お前、火急の用があると言っていただろう?一体、どうした?危険が差し迫る事態にでもなったのか?」
不安げに様子を伺うメルさん。
しかし、一方のダンレッドは、「あー、ごめんっ!メル!」と苦笑して短髪をかきあげる。
「実は、アレンにメルを呼び出して欲しいって頼まれて、嘘ついちゃった!俺は無事だよ!生活は平和そのもの!」
「は…?」
一気に機嫌が悪くなったような彼。
メルさんは、冷ややかな瞳でアレンを見上げる。
「アレン。俺を騙すなんて、どういうつもり?」
「すみません、メルさん。ダンレッドに頼むしか、貴方を呼ぶ方法がなかったので。今日は、メルさんにお願いがあって、ここに来てもらったんです。」
「お願い…?」