お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。

つい、ツッコミを入れた私だが、アレンの勢いはとどまるところを知らない。


「よく思い出してみてください、お嬢様。いじめっ子令嬢達を陥れることだけならまだしも、それ以外の口調や振る舞いで、バレそうになったことが何度あったか。」


「うっ!」


「つまりは、隙が多いんですよ。パーティーの時のような下級レベルの敵相手ならまだしも、今後、さらにしたたかなボスキャラが出てきたら、一発で反撃されてデッドエンドです。」


(そ、そんな…っ!!)


しかし、アレンの言うことに反論はできない。

たしかに、サーシャに変装している間も普段の“ニナ”があちこちに顔を出し、アレンにフォローをされていた現実がある。

完璧にサーシャを演じるためには、度胸と根性だけでは乗り切れない、清楚で可憐なお嬢様像、という高い壁があるのだ。

すると、全てを聞いていたメルさんが、わずかに目を細めて呟いた。


「つまり、社交界に出ても恥ずかしくない程度まで、俺に教育させようと?」


「はい。私が直接教養を叩き込むことも考えたのですが、私はまだ執事としての経験が浅く、本物のお嬢様達の世界で戦うための先生としては力不足です。」


そして、「ですが」と続けたアレンは、覚悟を決めたような瞳でメルさんに頭を下げた。


「かつて、私に執事の基礎から全てを指導し育ててくれた貴方なら、私よりもお嬢様の教育係に相応しいと思うのです。実際、私は、メルさん以上に完璧な執事を知りません。」

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