お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
町で初めてメルさんに会った時。しなやかな動作と振る舞いから、どこか普通の人とは違う品を感じた。
横暴な真似をしていた男達を一瞬で地面に沈めるほどの優れた体術。それに加え、一度手に取られ盗まれかけたトマトを商品の棚に戻させない気遣いと、主人に対する対応の速さ。
頭のキレがいい人だとは思っていたが、まさか執事で、さらにアレンの師匠であったなんて思わなかった。
…と、その時。
説得を続けるアレンが、懐から一枚の封筒を取り出し、口を開いた。
「これは、今朝ヴィクトル王子から届いた一ヶ月後に開かれる戴冠式の招待状です。成人された王子が王に即位する大事な儀式で、言わずもがな、各地から名のあるお嬢様やゲストが参加するのですが…。いわばこのイベントはお嬢様同士のマウント合戦と言っても過言ではありません。」
(マウント合戦…!嫌な響き…!!)
げんなりと顔をしかめた私に、顎に手を当てたアレンは静かに続けた。
「つまり、このイベントまでになんとかお嬢様力を磨いて、人並みの令嬢にならなければいけないということです。」