お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
「なるほど。だいたい話は読めたよ。そこのお嬢さんが置かれている立場もね。」
その時。ずっと黙っていたメルさんが、静かに口を開いた。
しぃんと静まり返る応接室。
しかし、承諾してくれると信じて緊張気味に言葉の続きを待つアレンに、コートの彼は表情一つ変えずに言い放った。
「断る。俺は、ダンに会いに来ただけだ。人の色恋沙汰や人生に干渉する気はないよ。」
迷いも同情もない声に押し黙る一同。
ローズピンクの瞳を細めた彼は、小さく息を吐いて低く続ける。
「俺がおてんばお嬢様のしつけをすると思った?しかも、目的は、いじめっ子令嬢を返り討ちにするためだって?…甘えるな。普通の教養を教えるならまだしも、悪役令嬢の指導なんて御免だよ。」
本気のお説教に、つい、うっと怯む。正論だけに何も言えない。
本来は、騙されて連れてこられた人にこんなことを頼むことさえおこがましいのだ。
しかし、アレンだけは、ぱぁっ!と目を輝かせ、興奮気味に声を上げる。
「ほら!見ましたか、お嬢様!この蔑むような瞳と高圧的な口調!これ以上、悪役令嬢の手本に相応しい人はいませんよ!」
「アレン。お前、喧嘩売ってるだろう?」
険しくなるメルさんの綺麗なお顔。
整っているが故に、普通の人に言われるよりも一言一言に圧を感じる。