お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。


やがて、コートを羽織り直した彼は、静かにソファを立った。

もはや話し合いに応じる気も失せたらしいメルさんは、ため息混じりに部屋を出て行く。


「悪いけど。俺はもう、とっくの昔に執事を引退した身。今さら、きらびやかな世界に戻る気も、燕尾服に袖を通す気もない。アレン。主人の力になりたいなら、自分であがきなさい。」


ぴしゃっ!と突きつけられたセリフ。

引きさがろうにも打つ手がなくなったアレンは、もどかしげに眉を寄せる。


「あっ!メル!メロン、好きだったでしょ?!ニナ嬢が用意してくれたんだ!食べて行きなよ!」


最後の切り札として、そう叫んだダンレッド。

しかし、こちらを振り向いたメルさんは、氷のような態度のまま低く答えた。


「いらない。後先考えないお嬢様が武器に使ったメロンなんて、願い下げ。」


部屋を出ていき、見えなくなった背中。

しかし、ここで黙っている私ではなかった。

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