お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
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「ついに、今夜は舞踏会だね。ニナ嬢、レッスンの方はどう?」
メルさんとの約束後、きっちり二週間が経過した。
ハンスロット家に顔を出したダンレッドが、ひょっこりと部屋に顔を覗かせてそう尋ねる。
「ばっちり!…とまではいかないけど、なんとか形にはなったわ。…寝る間も惜しんで踊ったお陰で、筋肉痛で身体がバキバキだけどね…」
私の言葉を聞いて苦笑するダンレッドに、眉間を抑えて目を閉じるアレン。
『腕!足!指先まで気を抜かないでください!』
『はい、顔!そんな疲れ切ったロバのような表情、王子に見られたら速攻で婚約破棄ですよ!』
信じられないくらいの暴言が飛び交う中、何度アレンの足を踏みつけたか分からない。
もう無理だと諦めそうになったこともあったが、心が折れそうになるたびにメルさんの顔が頭をよぎり、私を奮い立たせたのだ。
レッスンを始める前は曲名もステップも分からなかった私が、人並みに踊れるようになるなんて、正直思っていなかった。
「お姉さま、無理はしないで。私のためにごめんなさい…」
レッスン中、常に側で見守り、水分やタオルのサポートをしてくれたサーシャ。
自分のせいと罪悪感を露わにしている妹に、私はにこり、と笑いかえす。
「気にしないで、サーシャ!これは、私が自分で決めたことだから。…絶対、舞踏会でメルさんに認めてもらうわ…」
何度も頷くサーシャは、今にでも泣き出しそうだ。
ダンス技術以外の、曲名や作曲者、テンポの種類などの知識を教えてくれたのはサーシャである。サーシャのためにも、結果を出さなければ。