お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
つい、涙が出そうになった。
やっぱり、メルさんはいい人だ。何だかんだ、私とアレンのことを気にかけてくれているらしい。
そんな彼の優しさに応えるためにも、ステップがグチャグチャで品のかけらもないようなダンスで無様な姿を見せるわけにはいかない。
「せっかく送ってくれたのなら、用意していたドレスは屋敷に置いて行きましょうか。ちょうど、サイズも合うみたいですしね。」
そう言ってプレゼントを眺めるアレンも、どこか嬉しそうだ。
きっと、今日の舞踏会は上手くいく。
「お姉さま、くれぐれも気をつけて。私のためでも、無茶だけはしないでね…?」
「えぇ、分かったわ。行ってくる!」
不安と期待を込めた瞳で私を見送るサーシャに手を振る。
念のため、護衛として屋敷に残ると名乗り出たダンレッドも、いつもの笑みで私たちを送り出した。
そして。
私とアレンを乗せた馬車は、ヴィクトル王子の待つ城に向かって、夜の街を走り抜けていったのだった。