お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
サーシャがわがままを言うような性格ではないことを私はよく知っていた。それは、サーシャを知る人ならみんなそうだ。
ましてや、婚約者である王子に招待された大事なパーティーを無断でボイコットするなんて、私ならあり得るが、真面目なサーシャがするはずがない。
唯一、常に行動をともにしている付き人ルコットですら、彼女の心境を図りかねて困惑しているらしい。
話を聞いた限り、ルコットが受付をしている一人の間に何かがあったことだけは明白だ。
ルコットによると、サーシャは扉を叩いて声をかけても、一人にして、の一点張りで、話すらしようとしないらしい。
しおしおと頭を抱えたお母様からは「反抗期かしら…」という呟きも漏れ、もはや末期だ。
(仕方ない。扉を開けないのなら、他に方法はないわね。)
「…お嬢様?」
何かを感じ取った様子のアレン。
私は、彼に止められる前に素早く部屋を出て、屋敷の外へと飛び出した。そして、そびえ立つ屋敷を見上げると、側に生える大木と二階の窓の距離を目視する。
(よし。思った通り、ちょうどあそこはサーシャの部屋の窓…)
「お嬢様っ!何をしているんです!!」