お嬢様。この私が、“悪役令嬢”にして差し上げます。
嫌な予感を察知して追いかけてきたアレン。
すると、彼の目に映ったのは、ワンピースの裾がひらひら踊ることも気にせずに大木の枝に足をかけてよじ登る令嬢の姿だった。
「ほら、やっぱり!そんな気がしたんですよ!!危険ですからやめてください!しかもズボンならまだしも、今日はワンピースなんですよ!」
「大丈夫!見てもいいわよ!」
「バカですか、貴方ァ!!」
律儀に視界を手で覆うアレンのお説教が響く中、ガタン!と窓に手をかける。
すると、部屋の中は真っ暗で、そこにあったのはクッションを抱きしめて俯く少女の姿。
「サーシャ…!!」
「…っ?」
その名を呼ぶと、驚いたような彼女が、ぱっ!と顔を上げた。
サーシャの綺麗な碧眼は潤んだままキラキラと光っていて、頰には涙の跡が見える。
(泣いてる…?)
どきん、と心臓が音を立てた。
予想よりも深刻そうな表情に胸が痛む。
「ここを開けてくれない?サーシャ。貴方とお話がしたいの。」
「……」
「今は、私とも話したくない…?」
ーーキィ…
小さく音を立てた窓。
鍵を開けてくれたことに、ほっ、として、私は導かれるがまま、窓枠へと降り立った。