闇に溺れた天使にキスを。



確か、その人はひとつ年上の3年生。
名前は平沢 翔(ひらさわ しょう)先輩。

クールでかっこいいと、2年でも有名で。

私は彼のことを知らなかったけれど、少なくとも沙月ちゃんからそう説明されていた。


だから私は知っていたのだけれど───


「……っ、もしかしてあんた、白野未央?」
「へ……」

驚いた。
彼が私の名前を知っていたから。


けれど、私だけが驚いているわけではないようで。
彼も切れ長の目を見開き、驚いていた。


「えっと…あの、そうです……」

どうして私のことを知っているのか。
気になって仕方がない。


「そうか、あんたがお気に入り…」
「お気に入り……?」

どうしてここで、“お気に入り”だなんて言葉が出てくるのか。

わからなくて首を傾げると、彼は首を小さく横に振った。


「……なんでもない。
じゃあここでサボってたことは、お互い秘密だから」

「……っ」


どうやら彼もサボっていたようだったけれど、私がサボっていたことも察したらしく。

それだけ言い残し、階段を降りていってしまった。


その時、ちょうど1時間目が終わるチャイムが鳴る。


そして今日、私は初めて授業をサボるという悪いことをしてしまった───

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