闇に溺れた天使にキスを。



そんなもの、夢物語で実際にあるはずないって思っていた。

喧嘩ばかりするグループだなんて、少なくとも私は見たことがない。


けれどたまにこの辺りでも、不良グループの集まりや喧嘩をしているところを目撃した生徒も数人ほどいるらしく。

確実に嘘と言い張るには不十分なようで。


そして目の前にいる先輩も、“総長”という言葉を口にした。

もしそれが本当だというのなら───


暴走族、というものが本当に実在するということ?
ダメだ、理解が追いつかない。


「あっ、説明してなかったわ、悪い。今から総長のところに行くんだ、俺は悪いやつじゃねぇから安心しろ」


安心しろ、だなんて。
そんなのできるわけがない。

だって今から、その“総長”というトップの人に会いに行くのだろう。


そんなの、目の前の彼なんかよりもっと危険な人に決まっている。

何をされるかわからないというのに。


どうして私なんだろう。
その“総長”という人と、私に接点なんてない。

私はその人のことをまったく知らないのだ。

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