闇に溺れた天使にキスを。



「どうしてそんなに嫌そうなんだ?」

私の様子を見て、不思議そうな顔をする平沢先輩。


逆にどうしてふたりは平気で人を攫えるのだろう。
いくら総長命令とはいえ。

これは最悪の場合、警察沙汰になる恐れだってある。


「あっ、そうだ。ひとつ言い忘れてたけど、暴走族時の総長は偽名使ってるから。みんな佐久間(さくま)さんって呼んでる。

だから絶対にあんたも佐久間さんって呼べよ?
族の中で、総長は偽名を使ってるから」


偽名も何も、本名も知らない。

本気でこのふたりは、私とその佐久間という男の人が知り合いだと思っているのだろうか。


わからなくて、とにかく命のために首を縦に振る。


けれど車が走り、学校から遠ざかっていけばいくほど。
不安になって泣きそうになってしまう。

怖い、助けて、私は一体これからどうなるの?


その気持ちは増していくばかりで───


「……っ」

ついに限界がやってきてしまった。

泣いたら余計にうざがられ、暴力を振られる恐れもあるため、俯いて必死にそれを隠すけれど。

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