闇に溺れた天使にキスを。



体の震えを抑えながら工場の中へと足を踏み入れる。
そこは静かで薄暗く、気温も外より低い気がした。

中は外見と同じように廃れていて、壁や床が黒ずんでいたり錆びていた。


それがさらに恐怖心を掻き立てられている中、ふたりはどんどん奥へと進んでいく。

もちろん逃げないよう、平沢さんは私の腕を掴んでいた。


それから奥の突き当たりまでやってくると、地下へ続く階段があった。

ここで階段を降りれば───


“佐久間さん”という総長がいる。
それも私と会いたいらしい。


「危ないから転ぶなよ?」

私の腕を優しく掴みながら、心配してくれるけれど。
今は恐怖心でいっぱいのため、頷くことすらできない。


また頬に涙が伝い、声を押し殺して泣いてしまう私。


泣き顔を見られたくなくて、なるべく俯いて周りを見ないよう階段を降りる。

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