闇に溺れた天使にキスを。



じっと神田くんを見つめるけれど、彼は何も変わっていない。

私の知っている“彼”が、目の前にいる。
優しく、穏やかな表情を浮かべながら。


ただ、頬に少し傷ができていた。
その部分が赤くなっている。


「やっと白野さんに会えた」

混乱する私とは違い、彼は嬉しそうに笑っている。

会いたかったはずなのに、状況が飲み込めなくて同じように喜べない。


「じゃあここで立っているのもなんだし、座ろうか」

そう言って神田くんは私と距離をとったけれど。
その瞬間、足に力が入らなくて倒れそうになる私。


それにいち早く気づいた彼が、慌てて私を抱きとめてくれた。


「白野さん…」
「ご、ごめんね…足に力が入らなくて」


先ほどまで怖かった分、神田くんがいて安心したからだろうか。

全身の力が抜ける。

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