闇に溺れた天使にキスを。



やっぱり体は正直で、混乱以上に安心したようだ。

「怖い?」
「へ……」


顔を上げると、切なげな神田くんの姿が目に映った。


「いきなりこんな状況、怖いよね」
「え、あの……」


誤解している。

確かに怖かったけれど、今は違う。
ただ理解が遅れているだけ。


「ごめんね、やっぱり帰ろうか」
「……っ、や、やだ!」

それは嫌だ。
せっかく神田くんと会えたのに。

すぐ帰らないといけないだなんて。
それだけは嫌で、はっきりと言い切れる。


「……白野さん?」
「嫌だ、帰りたくない…」


神田くんの背中に手をまわし、また抱きつく形になる。
こうでもしないと無理矢理帰らされそうな気がしたのだ。


「……っ、わかったから。
そんなかわいいことしない」

すると彼はすぐ折れてくれた。
どうやら帰らなくていいようで、安心する私。

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