闇に溺れた天使にキスを。



ここまできて、ようやく“神田くんの前”の意味がわかった。

あの空き教室であった時のように、彼は私を後ろから抱きしめるつもりなのだ。


その考えは当たっていて、前のように足を少し開いた彼の前に座らされる。


「だ、ダメ…」

急いで立ち上がろうとした時にはもう、完全に彼に捕まっていた。


「はい、捕獲。
隙だらけだね、白野さんは」

簡単に捕らえられる、なんて言って小さく笑う神田くん。


ふたりきりの時でも恥ずかしかったというのに、今は人前だから恥ずかしさがさらに増す。

顔が熱くなって、俯くことしかできない。


先ほどまで混乱していたことが全て頭から取り除かれ、私を抱きしめる彼のことでいっぱいになる。

もう全てがどうでもよくなるくらい、神田くんで埋め尽くされる。


「あ、あの…」
「こら、動かないの」

優しく怒って、私が動けないように後ろから強く抱きしめてきた。

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