闇に溺れた天使にキスを。



「はぁ、お前みたいな鈍感野郎、この世で初めて見た」
「えっ、と…?」

「そういう“フリ”してる女はいくらでも見たことあるけどな。お前も“フリ”?」


“フリ”?って聞かれても、質問の意味がわからなくて。
とりあえず曖昧に頷くけれど。


「バカか、わかってもねぇのに頷くな」
「いたっ……」
「痛くねぇだろ」


軽く涼雅くんにチョップを食らわされる。


「暴力反対だ」
「女だから暴力ダメとか差別だろー」

「うっ…そうだけど、暴力は誰に対してもいけないことだもん」


やられっぱなしは不服のため、言い返してやろうと思い、本当のことを彼に言ったのだけれど。

ふと涼雅くんの表情が真剣なものへと変わるから、思わず体が強ばってしまう。


何か私、気分を害することを言ったのかな…と不安になってしまい、涼雅くんをじっと見つめて言葉を待つ。


「…そうだよなぁ」
「え?」

「暴力はダメだよな、わかってんだけどなぁ…」
「涼雅、くん…?」

「もう、そういう世界から抜け出せない場所にいるから」


薄笑いを浮かべる涼雅くんが怖くて。
思わずゾクリとしてしまう。

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