闇に溺れた天使にキスを。
暴走族じゃない?
それならいったい、他に何が───
「……組」
「えっ…」
小さく、涼雅くんが何か呟いたかと思えば。
「ヤクザの世界で生きてる」
揺らがない瞳が私を捉えた。
嘘をついているようには見えない。
だからこそ、何も返すことができなくて。
だって、ヤクザの世界って言わなかった?
私とはかけ離れた遠い闇の世界。
そこに涼雅くんがいるというの?
そんな危ないところに涼雅くんがいるだなんて。
すぐに受け入れられるはずがないけれど。
確かにそれなら、彼の背中に広がる刺青の意味が通るかもしれない。
ヤクザの人たちは和彫りを入れているというイメージがある。
あくまで私のイメージだけれど。
「やっぱそんな反応になるよな」
私の反応を、涼雅くんは予想通りだと言う。
「だ、だってそんな…」
「ヤクザっつっても想像できねぇよな」
シャツを着ながら話す涼雅くんの口調は軽いから、さらに困惑してしまう。