闇に溺れた天使にキスを。
「苦しくない?」
乗り換えした時の電車は、相変わらず異常なほど人が多い。
ぎゅうぎゅう詰めのため、余裕なんてほとんどない。
「う、ん……」
平気と言いたいけれど、周りに押されてしまい、まったく動けない。
おしくらまんじゅう状態だ。
力のない私は、押し返す力もなく。
ただ神田くんのほうへ行かないよう、必死だった。
私にはそれが限界で、あとは押されるがまま。
「絶対苦しいよね」
私の状態を目にした彼は、小さく笑い。
「俺の元においで」
そっと、目立たないよう私の腰に手をまわしたかと思えば。
いつもより少し強い力で私を自分の元へと寄せる。
あっという間に彼との距離がゼロになり、密着状態へと変わる。
ああ、せっかく神田くんの元へ行かないよう必死だったのに。
結局は彼の手によって、その努力を潰されてしまう。
「少しは余裕になった?」
「うん…ありがとう」
神田くんの言葉通り、周りに押される感覚がなくなった。
彼が私を抱き寄せて、周りから守ってくれているように思える。