闇に溺れた天使にキスを。




「華さんに異変があったのは、確か夏祭りの後だよね」


「ああ。調べたら夏祭りの3日後から華の様子がおかしくなったらしい」



ふたりは情報を交換し、宮橋先生について話していて。

どうやら話を聞く限り宮橋先生はここ数週間、定期的に姿が見えなくなるということだった。


それも行方はわからず、聞いても濁されるらしい。



「……そもそも今思えば、夏祭りの日もおかしいんだよね」


少しだけ顔を神田くんのほうへ向けると、目が合ってしまって。



考え込む動作をしていた神田くんが、ふっと微笑み柔らかな表情をした。

それから私の頬を撫でられる。



優しい手つきが気持ちよく、思わず目を細めてそれを受け入れてしまった。


「真剣な話してんのに、何じゃれ合ってんだよ」
「……っ」



けれど涼雅くんの言葉ではっと我に返り、恥ずかしくなった私は顔を背けるように前を向いて深く俯いた。



「あ、涼雅のせいで白野さんが照れた」
「俺は悪くねぇよ。場所考えろ場所を」


「別にここでも大丈夫だよね」
「どうかふたりきりでやってくれ。周りも困ってんだろ」



そうだ、すっかり忘れていた。

今ここには多くの人がいて、全員の視線がこちらを向いていることに。



「えー、でも白野さんがかわいいから仕方ない気がする」


そんなこと言って、照れている私の頭をまた撫で始める彼。


「……ペット扱いだな」
「ペットじゃないよ、白野さんは彼女だよ」


そんな大胆なことすら恥ずかしがらずに言うから、神田くんには相当な余裕が感じられる。

< 425 / 530 >

この作品をシェア

pagetop