闇に溺れた天使にキスを。
「華さんに異変があったのは、確か夏祭りの後だよね」
「ああ。調べたら夏祭りの3日後から華の様子がおかしくなったらしい」
ふたりは情報を交換し、宮橋先生について話していて。
どうやら話を聞く限り宮橋先生はここ数週間、定期的に姿が見えなくなるということだった。
それも行方はわからず、聞いても濁されるらしい。
「……そもそも今思えば、夏祭りの日もおかしいんだよね」
少しだけ顔を神田くんのほうへ向けると、目が合ってしまって。
考え込む動作をしていた神田くんが、ふっと微笑み柔らかな表情をした。
それから私の頬を撫でられる。
優しい手つきが気持ちよく、思わず目を細めてそれを受け入れてしまった。
「真剣な話してんのに、何じゃれ合ってんだよ」
「……っ」
けれど涼雅くんの言葉ではっと我に返り、恥ずかしくなった私は顔を背けるように前を向いて深く俯いた。
「あ、涼雅のせいで白野さんが照れた」
「俺は悪くねぇよ。場所考えろ場所を」
「別にここでも大丈夫だよね」
「どうかふたりきりでやってくれ。周りも困ってんだろ」
そうだ、すっかり忘れていた。
今ここには多くの人がいて、全員の視線がこちらを向いていることに。
「えー、でも白野さんがかわいいから仕方ない気がする」
そんなこと言って、照れている私の頭をまた撫で始める彼。
「……ペット扱いだな」
「ペットじゃないよ、白野さんは彼女だよ」
そんな大胆なことすら恥ずかしがらずに言うから、神田くんには相当な余裕が感じられる。