闇に溺れた天使にキスを。
車が停まっている場所までやってくると、宮木さんが優しい笑顔を浮かべて迎え入れてくれた。
神田くんや組長のように、宮木さんも穏やかな雰囲気をまとっている。
「……涼雅くんとは大違いだ」
「あ?お前今なんて言った?」
「だって、涼雅くんだけ優しくない」
もちろん優しい部分もあるのだけれど、意地悪な部分が圧倒的に強い。
「なんで拓哉の彼女だからって優しくしねぇといけないんだよ」
「優しくしなくていいけど意地悪しないで」
「お前の反応が面白いのが悪い」
「私のせいじゃないもん」
「またもんもん連発する」
真剣に頼んでいるというのに、また意地悪してくる涼雅くん。
「……おふたりは仲がよろしいのですね」
そんな私たちのやりとりを聞いていた宮木さんが、微笑みながら口を挟んできた。
「な、仲良くないですこんな人…!」
「白野と仲良しこよしとか永遠にありえねぇな」
「私はおふたりが仲良く思えます。ふたりのやりとりを見たら、きっと神田様は妬いてしまわれるでしょう」
「えっ…」
宮木さんのことを私は何も知らないため、嘘か本当かはわからなかったけれど。
私と涼雅くんの会話を聞いたら神田くんが妬く……?
想像してみるけれど、妬くというよりかは優しく笑われるような気がする。
だって一方的に私が意地悪されているし、神田くんも意地悪な人なのだから参戦してくる恐れだってある。
「拓哉はこいつが他の男といる時点で妬くだろ」
「それはごもっともです」
呆れなように話す涼雅くんに、宮木さんが苦笑したような気がした。