闇に溺れた天使にキスを。



他の男の人といるだけで神田くんが妬くだなんて、そんなことありえない。



「そ、そんなことないよ…神田くんはそんなことで妬いたりしない」


ふたりとも肯定しているけれど、代わりに私自身が否定した。


「お前、相当疎いな」
「え……」

「あいつがどれだけ嫉妬深いかって、見ればわかんだろ。お前にベタ惚れだし」

「ベタ惚れじゃないよ…」


私のほうがずっとずっと好きに決まっている。



「じゃあお前は、さっきの拓哉の照れ顔をどう説明するんだ」

「説明…?」
「あんな照れ顔、二度と拝めねぇぞ」


確かに神田くんは頬を赤らめていたけれど。


「一瞬だったからあんまりわからなかったよ…」


すぐ目元を手で覆われてしまい、『見たらダメだよ』と言われたため神田くんの照れ顔をあまりよく見ることができなかったのだ。


「あんな顔させるお前、ある意味すげぇよ」
「……神田様が照れたのですか?」


このことには宮木さんも興味を示したらしく、少し食い気味に話しかけられる。


「ああ。拓哉が顔赤くして照れたんだぜ。
考えられねぇだろ?」

「それはぜひ私も見てみたいものです」


宮木さんも興味津々である神田くんの照れ顔。
私だってもっと見たかった、なんて。



「……なんかどんどん拓哉変わってくな」
「え?」


すると突然涼雅くんが不機嫌な声を出すものだから、思わず顔を上げて彼のほうに視線を向ける。


「羨ましい」


けれど涼雅くんは私のほうを向く気配はなく、ただ窓枠に肘をついたままそう言った。

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