闇に溺れた天使にキスを。







その日から1週間、宮橋先生は学校に来なかった。


親が突然倒れ看病のためらしいけれど、神田くんや涼雅くんの話を聞いた直後だとにわかに信じがたい。



神田くんも宮橋先生とは連絡がつかないらしく、完全に行方がわかっていないようだ。

そのため彼自身の表情も暗い。



「白野さん、おはよう」


そして今日も神田くんは家のすぐ近くまで来てくれて。


運転席に宮木さん、後部座席にはメガネをかけて真面目な姿である神田くんがいた。


あれから毎日、行きも帰りも送り迎えをしてくれているため、神田くんにも運転してくれる宮木さんにも悪い。



「おはよう…毎日ごめんね」

「毎回言わなくていいよ。
俺が勝手に心配してやってるだけだから」


優しい笑顔を浮かべ、私の頭に手が置かれた。


「それに俺だってごめんね。
ふたりの時間作れなくて」


さらには逆に謝られてしまう。


正直ふたりの時間はなくて寂しい気持ちはあるけれど、夏休みに会えなかった期間を思い出せばこのくらい平気だった。


「ううん、大丈夫…だって今、忙しいんでしょう?」


見ればわかる。

神田くんが今とても忙しそうにしているってことくらい。


「うーん、そうだね…確かに忙しいかな」


私の頭を撫でながら、あまり良くない表情で話す神田くん。



「神田くんは大丈夫、なの…?」
「え、俺?」


心配になって聞いてみたけれど、彼は驚いたように目を見開いている。


「うん…だから無理しないでほしい」


神田くんは周りばかり優先して、自分のことは後回しにするから。

この間だって自分が怪我を負ってもなお、私を優先したのだ。

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