闇に溺れた天使にキスを。
*
その日から1週間、宮橋先生は学校に来なかった。
親が突然倒れ看病のためらしいけれど、神田くんや涼雅くんの話を聞いた直後だとにわかに信じがたい。
神田くんも宮橋先生とは連絡がつかないらしく、完全に行方がわかっていないようだ。
そのため彼自身の表情も暗い。
「白野さん、おはよう」
そして今日も神田くんは家のすぐ近くまで来てくれて。
運転席に宮木さん、後部座席にはメガネをかけて真面目な姿である神田くんがいた。
あれから毎日、行きも帰りも送り迎えをしてくれているため、神田くんにも運転してくれる宮木さんにも悪い。
「おはよう…毎日ごめんね」
「毎回言わなくていいよ。
俺が勝手に心配してやってるだけだから」
優しい笑顔を浮かべ、私の頭に手が置かれた。
「それに俺だってごめんね。
ふたりの時間作れなくて」
さらには逆に謝られてしまう。
正直ふたりの時間はなくて寂しい気持ちはあるけれど、夏休みに会えなかった期間を思い出せばこのくらい平気だった。
「ううん、大丈夫…だって今、忙しいんでしょう?」
見ればわかる。
神田くんが今とても忙しそうにしているってことくらい。
「うーん、そうだね…確かに忙しいかな」
私の頭を撫でながら、あまり良くない表情で話す神田くん。
「神田くんは大丈夫、なの…?」
「え、俺?」
心配になって聞いてみたけれど、彼は驚いたように目を見開いている。
「うん…だから無理しないでほしい」
神田くんは周りばかり優先して、自分のことは後回しにするから。
この間だって自分が怪我を負ってもなお、私を優先したのだ。