闇に溺れた天使にキスを。
*
お昼休み。
「今日から保健室の先生が復帰するらしいよ」
お弁当を食べていたのだけれど、沙月ちゃんの言葉でピタリと箸を持つ手が止まった。
「なんか男子たちが騒いでた。早速サボりに行ったら怒られたって喜んでた。ドMな男子が多いのね」
「……っ」
宮橋先生が1週間ぶりに学校に来たようで。
嫌な予感がした私は、思わず神田くんの席を見たけれど───
さっきまでいたはずの神田くんの姿がなかった。
いつもは自分の席でひとり、ご飯を食べているのに。
今日に限って姿がないため、不安になりざわっと胸騒ぎがした。
「未央、どうしたの?」
その時沙月ちゃんに声をかけられ、はっと我に返る。
「あ、いや…なんでもない。
しばらく来てなかったんだよね…?」
「そうそう。親が倒れたらしくて」
宮橋先生は学校で有名のため、休んでいる理由はもう全学年に広がっているようだ。
「絶対大変だよね、復帰して大丈夫なのかな」
「…………」
沙月ちゃんが話しているけれど、内容が耳に入ってこないくらいの不安に襲われる。
宮橋先生のところに行っているのかなって。
もしそうだとしたらきっとこの1週間何していたのか聞いているのだろうと、無理矢理思い込む。
そもそも宮橋先生のところへ行っているだなんて決めつけるのは良くない。
もしかしたら空き教室でひとり、食べている可能性だって───
「……っ、ごめん、沙月ちゃん」
「え?どうしたのいきなり」
「ちょっと、用事思い出したから行ってくる…!」
考えれば考えるほど不安が膨れ上がり、モヤモヤして。
気づけば足が動いていた。