闇に溺れた天使にキスを。



教室に戻ると沙月ちゃんに心配されたけれど、平気だと嘘をついた。

心配かけさせないようにしようと必死で笑顔を作る。


ただ、その後も中々神田くんは帰ってこないため、どんどん不安だけが溜まっていく。



確か今日、お昼頃に抜けないといけないと言っていたはずなのに…神田くんの荷物はまだ机の横にかけられていた。


「……あ、ちょっと外の天気悪くない?
雨って言ってたっけ?」


昼休みが終わる5分前、沙月ちゃんがふと窓の外を見て口を開いた。


ゆっくりと顔を上げて窓の外を見れば、確かにどんよりとしていて分厚い雲が空を覆っている。



今にも雨が降り出しそうな勢いだ。


「えー、折りたたみ傘なんてあったかな」



沙月ちゃんが不安そうにして鞄の中を探る。


「良かった…あった。
未央は傘あるの?」


どうやら鞄の中には折りたたみ傘があったようで、安心した様子の沙月ちゃん。


「……うん、多分あると思う」


鞄から折りたたみ傘を抜き取った記憶はないから、鞄の中にあるはず。

ただ確認する元気さえもないため、私は言葉を濁して返しておいた。


それからすぐにチャイムが鳴り、教室に先生が入ってくる。


「あれ、神田はいないのか?
4時間目までは出席しているのに」


けれどまだ神田くんは教室に戻ってこなかった。

結局彼が戻ってきたのは5時間目が終わる10分くらい前で。


「おー、神田。お前どこ行ってたんだ?」
「……すいません、熱があるので帰らせてもらいます」



少し元気がない様子で話した神田くんは、一枚の紙を先生に渡す。

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