闇に溺れた天使にキスを。






6時間目が終わり、ホームルームの後にはもう雨が降っていた。

それも小雨なんかではなく大雨で。


【今着いたから裏門で待ってる】


6時間目が終わってすぐ涼雅くんから連絡が入り、本当は急いで帰る準備をして裏門へ向かわないといけないのに。



「……はぁ」

先ほどからため息ばかりで、まったく帰る準備が進まない。



「白野、まだ教室出ないのか?」
「……あ、鍵閉めておくんで大丈夫です」


どうやら私を待っていた様子の先生が、痺れを切らしたのか声をかけてくれた。


「おー、じゃあ頼むわ。
なんか元気ないけど何かあったのか?」

「えっと…雨だと気分が乗らなくて……」


本当の理由はもちろんながら言えないため、雨のせいにしておく。


「そっか、先生もだわ。
傘はあるのか?」


「あ、はい。折りたたみがあります」

「じゃあ風邪ひかないよう帰れよ。この後も雨は強くなるらしいからな」



結構面倒見が良いと評判の先生は、最後も気遣いの言葉をかけてくれてから教室を後にした。

そしてひとりになった教室は驚くほど静かで。


「雨、すごいなぁ」

自分の声だけが虚しく教室内に響いた。


早く行かないといけないと、頭の中ではわかっているのに足が思うように動かなくて。


その時突然スマホが音を立てた。

見ると涼雅くんからの電話だったため、慌ててスマホを耳に当てる。



「も、もしも…」
『お前今どこにいるんだ?何かあったのか?』


少し焦ったような涼雅くんの声がスマホ越しに聞こえてきた。

どうやら私が遅くて心配をかけさせてしまったようだ。


本当に私は何しているんだろうって、自分に腹が立ってくる。

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