闇に溺れた天使にキスを。
*
6時間目が終わり、ホームルームの後にはもう雨が降っていた。
それも小雨なんかではなく大雨で。
【今着いたから裏門で待ってる】
6時間目が終わってすぐ涼雅くんから連絡が入り、本当は急いで帰る準備をして裏門へ向かわないといけないのに。
「……はぁ」
先ほどからため息ばかりで、まったく帰る準備が進まない。
「白野、まだ教室出ないのか?」
「……あ、鍵閉めておくんで大丈夫です」
どうやら私を待っていた様子の先生が、痺れを切らしたのか声をかけてくれた。
「おー、じゃあ頼むわ。
なんか元気ないけど何かあったのか?」
「えっと…雨だと気分が乗らなくて……」
本当の理由はもちろんながら言えないため、雨のせいにしておく。
「そっか、先生もだわ。
傘はあるのか?」
「あ、はい。折りたたみがあります」
「じゃあ風邪ひかないよう帰れよ。この後も雨は強くなるらしいからな」
結構面倒見が良いと評判の先生は、最後も気遣いの言葉をかけてくれてから教室を後にした。
そしてひとりになった教室は驚くほど静かで。
「雨、すごいなぁ」
自分の声だけが虚しく教室内に響いた。
早く行かないといけないと、頭の中ではわかっているのに足が思うように動かなくて。
その時突然スマホが音を立てた。
見ると涼雅くんからの電話だったため、慌ててスマホを耳に当てる。
「も、もしも…」
『お前今どこにいるんだ?何かあったのか?』
少し焦ったような涼雅くんの声がスマホ越しに聞こえてきた。
どうやら私が遅くて心配をかけさせてしまったようだ。
本当に私は何しているんだろうって、自分に腹が立ってくる。