闇に溺れた天使にキスを。
「……っ、あ…せん、せ……」
目に涙がたまり、あっという間に頬を伝う。
息ができなくて声にならない声が出る。
ぼやける視界の中に映るのは、目が充血して狂ったように私を見下ろす宮橋先生の姿で。
もう無理だと思った。
何をしても無駄だと、敵わないと。
ぎゅっと目を閉じ力無い抵抗をしながらも、体の力はだんだん抜けていき。
脳に血液が行き渡らなくなったのか、だんだんと意識が朦朧として───
「……っ、白野!」
まるで夢の中にいるような感覚に陥り、遠くで誰かが私の名前を呼んだ気がした。
誰だろう、苦しいよ。
圧迫されてたまらなく苦しい。
もうダメだと諦めて、手に力が入らなくなったその時。
グッと宮橋先生の腕が引かれ、ようやく私の首から離れた。
その瞬間膝がガクンと力なく折れ、その場で崩れ落ちようとしたけれど。
誰かが私の肩に手をまわし、勢いよく抱きとめてくれた。
「……ゲホッ、ゲホッ」
諦めていたはずなのに、空気が吸えるようになると必死で酸素を求めて息をする自分がいて。
焦りすぎたのかむせ返ってしまい、今度は咳が止まらなくなる。
「焦って息をしようとするな、過呼吸になるぞ。
ゆっくりでいいから」
そんな私に優しく話しかけ、背中をさすってくれる誰か。
そのおかげで徐々に冷静さを取り戻していき、ゆっくりと相手を確認するとそこには涼雅くんがいた。
「そう、ゆっくり息をすればいい」
「……っ、あ…」
涼雅くんを見た瞬間、もう大丈夫なのだと思えた私は無意識のうちに目から涙が溢れてきて。